心のエコノミークラス症候群にならないために


現役をリタイアした人間が家にじっとしていて、くすぶっていると、からだにも決していいことはなく、精神衛生上もよろしくありません。
家にいて、空気のよくない部屋でずっと同じ姿勢で仕事をしていたら、足も頭も、血流が悪くなってきます。
外を出歩く習慣があれば、そんな心配は無用です。
親子が同居しているうちは、親は子を世話するため、子は親に頼るために、家庭は社会的・経済的な生活基盤になります。
しかし、子が独立し、夫婦だけの関係が残ったときに、家庭の持つ機能は薄れてしまいます。


そのとき家庭がお互いにどれだけ精神のよりどころになるのか、考えてみる必要があります。
ことに、夫が現役を退いて、活動拠点が会社から家庭に移った場合、家庭は夫にとって、はたして生き甲斐を創出する場になるのか。

引退後は毎日が日曜日と決め込んで、ひがな家でゴロ寝。
こんなことをしようものなら、一週間で邪魔者扱いされてしまいます。
かつて社会的な安全装置として家庭が機能していたのも、夫が給料を稼いできたからです。


その経済的な源泉となっていた労働がなくなれば、「疲れをとるため」という方便も通らなくなります。
リタイアした夫が、否が応でも外に出なければならない理由がここにあります。
外に出るということは、心を外に開くということでもあります。

たとえ、ひとりの散歩であっても、そこに外界との接点があります。
外界との接点を持つことで、「心の血栓」が溶けます。
身も軽く、清々しい気分にもなるというものです。


年をとってくれば、妻は夫をわずらわしいと思い、子供も、親の言うことを聞きません。
そういうものだと思っていれば、自然に外に心が向くようになります。
第二の人生の生きがいは、家族というより、むしろ自分のためと考えたほうが、楽しく、愉快なものになります。

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